フランス生産者訪問記
2025年7月にフランス各地の生産者を訪れました。訪れたのはシャンパーニュ、シャブリ、ブルゴーニュ(ボーヌ)、ボージョレ、ジュラ、アルザスとぐるっと一回り。
生産者さんの話を聞きながらの試飲はまさしく極上のひと時で、毎日が楽しくあっという間に過ぎていきました。栽培や醸造に関する考え方や実践方法は、その土地、気候、歴史、さらには将来への想いによって様々だと痛感しました。この訪問記で少しでもその想いをお伝えできたらいいなと思います。
ボージョレ ≪マルセル・ラピエール≫
さあ、ボージョレの、いえ、ナチュラルワイン界の大御所、マルセル・ラピエールの訪問になりました。モルゴン村の中心地であります、Villié-Morgon(ヴィリエモルゴン)にあります。
ナチュラルワインの父と呼ばれた、かのマルセル・ラピエール氏はボージョレという産地のワインをフレッシュで早飲みするワインから、繊細で熟成するワインへと銘醸地に伍する程にその品質を高めたことで、大きな功績がたたえられています。
しかし、マルセル氏は残念ながら2010年に若くして亡くなり、その後は長男のマチュー・ラピエールさんが後を継ぎワイン造りをしていました。近年は妹のカミーユさんが先頭に立ち、その遺志を引き継いでワイン造りを行っています。

(写真)カーヴと目の前に広がる畑の土
まずはカーヴの前に広がる畑へ案内してくれました。
3km四方に広がる20haの畑には、ゴブレ仕立てのガメイが密植されています。1万本/ha。
赤い花崗岩の土壌は、砕くとさらさらと砂になるほどで、ガメイの強い樹勢にはこうした貧しい土壌が適しているといいます。密植によって樹勢が抑えられ、健全なバランスが保たれています。
ガメイは収量を上げようと思えば100hl/haほど造れるけれども、ここでは30〜40hl/haに抑えています。収量を抑えることで、ぶどうの木が疲弊せず、長寿の樹を育てることができます。
実をあまり付けないようにすることで、樹齢の高い木を目指しています。
今の時期は、生長点を切る作業をしているところ。そうすることで、栄養が実の方へ集中すると考えています。 病害対策には、有機栽培で認められている薬剤のみを使用しています。
父の代から使うプレス機で優しい抽出
収穫したブドウは畑で選果をし、全房のまま4tのトロンコニック樽に入れます。最初に二酸化炭素を入れますが、発酵が始まれば自然と二酸化炭素は充満してきます。
マセラシオンカルボニックは年によって違いはありますが、大体1~6週間かけて行ったあとに、父の代から使っている伝統的な垂直式のプレス機でプレスをします。
(写真)4トンのトロンコニック樽
このプレス機の利点は、上から押すだけなので実が梗から外れないことで、余計な渋みなどが出てこないところです。ブドウには触らないので基本的にはピジャージュはしないのですが、抽出が少ないときのみ行うこともあります。


(写真左)垂直式プレス機 (写真右)醸造中の各段階のブドウの状態
プレス時にはまだ残糖があるけれども、いったんタンクに入れて、その後地下カーヴの樽で発酵、樽熟成をします。熟成にはブルゴーニュの2,3年使用した古樽を20~30年使います。新樽は使いません。ガメイは酸化しやすいので、酸化しないように澱を残すようにして、6か月から1年間の樽熟成をしています。
ちなみに、樽を修理する職人がいなくなってきているので、旦那さんが修理しているそうです(笑)。

(写真)地下カーヴ
さて、ここから試飲タイムです。日差しも和らいできたので、気持ちのいいアウトドアでのティスティングになりました。
何やらカーヴの壁面に木の板が釣り下がっているなと思ったら、なんとこの板が跳ね上がりのカウンターに大変身です。マルセルが仕事の後にヴィニュロン仲間と共に集まって飲んでいたカウンターなんだそうです。素敵ですね~。
まずは2024年から。
①
レザンゴーロワ 2024
この年は涼しく厳しい年というけれども、カミーユ自身は満足している。
Alcが低く抑えられてボージョレーらしい味わいで酸もしっかり出ている。
モルゴンとランシエに加えて買いぶどうも入っている。短いマセレーションで11月には瓶詰。
亡父マルセル曰く「レザンゴーロワはシャワーを浴びながら飲むワイン」(笑)
②
ル ボジョレー 2024
2haのランシエの畑(モルゴンのすぐ近く)。樹齢40~60年。3~4週間のマセラシオン(涼しい年のぶどうなので長め)。樽熟はせずに瓶詰。
レザンゴーロワよりも樹齢が高くマセラシオンが長い。2021年から造っている。
③
モルゴン 2020 SO2 20mg
樹齢40~110年。4週間マセラシオン。
暑い国とか冷蔵トラックが無い国とかの為にSO2入りを造っている。
④
モルゴン 2020 サンスフル
SO2有り無しでの比較。硬さが全然違う。口当たりホッとする柔らかさ。
⑤
キュヴェ カミーユ 2024
モルゴン コート・ド・ピィ。
モルゴンは花崗岩質だがコート・ド・ピィはシスト土壌。そのコート・ド・ピィの中にあってカミーユのところだけは花崗岩100%の岩盤。
カミーユが戻ってきたときにマチューから何か造ってみろと言われて造ったキュヴェ。5つの異なるエリアのぶどうを絞ったタンクからどれがいいかを尋ねられ、選んだタンクがその区画のぶどうだった。
⑥
キュヴェ マルセル・ラピエール 2024
いい年のみ造る(悪い年こそ良し悪しの差が出るらしい)キュヴェ。24年は兄のマチューと妹の3人で相談して最終的には造ることにした。コート・ド・ピィの110年の樹、シャトー・ガイヤの105年の樹から。
マルセルが1990年に初リリース。当時収穫したらすぐに温度を上げて発酵、プレスする軽やかな造りが主流だったなかで、スタイルの違うワインを造ったらINAOからモルゴンの認証を認められなかった。そこでヴィンテージすらローマ数字にしたワインをリリースした。造らない年はモルゴンに入れてしまう。
しっかり選果して造れば良いものできる。選果が一番大事。
「2024年は良いワインできた。2011年から造っているが、一番好きなヴィンテージ。」
(マチュー)
⑦
モルゴン 2021
雹害の年
⑧
モルゴン 2021 サンスフル
やわらかい。スパイシーさと塩味。ストロベリー、果実感。
⑨
キュヴェ カミーユ2019 サンスフル
果実感、ジューシー。フレッシュ感ある。
⑩
キュヴェ カミーユ 2019 (間違えてSO2入れてしまった)
(マチュー)「(SO2入りは)食事と共に長く飲むのにはいい。」
⑪
キュヴェ マルセル・ラピエール 2016
キュヴェ マルセル・ラピエールの中でも一番長くマセラシオンした年。
甘いニュアンスに塩味があって立体的。厚みがありふくよかな心地良さ。美味しい。
⑫
モルゴン2010 (マルセルの亡くなった年)
マルセルは収穫の後、ワインのことが心配で心配でならず、マチューにいろいろとアドバイスをしていたが、プレスを見届けて亡くなったという。
次々とバックヴィンテージを試飲して、熟成したラピエールの美味しさに改めて驚かされた。SO2の有無も全く違う印象になると確認できた。最後は大切な2010年も開けてくれてとても感激した。
アウトドアの試飲で緊張感がほぐれてくるこの感覚は、陽気なボージョレーという土地柄からくるものなのかわからないけれども、この雰囲気も含めてボージョレーのテロワールなんだと深く感じた。
試飲の間にも作業を終えた人たちや近所の仲間がどんどん集まってきて、みんなでワイワイと飲み始めた。マチュー、カミーユの兄妹の人柄が伝わってくる一コマだった。

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