フランス生産者訪問記
 2025
7月にフランス各地の生産者を訪れました。訪れたのはシャンパーニュ、シャブリ、ブルゴーニュ(ボーヌ)、ボージョレ、ジュラ、アルザスとぐるっと一回り。

 生産者さんの話を聞きながらの試飲はまさしく極上のひと時で、毎日が楽しくあっという間に過ぎていきました。栽培や醸造に関する考え方や実践方法は、その土地、気候、歴史、さらには将来への想いによって様々だと痛感しました。この訪問記で少しでもその想いをお伝えできたらいいなと思います。


ボージョレ ≪ヤン・ベルトラン≫

 ブルゴーニュ・サントーバン村を後にして南下。車で約一時間、距離にして100kmのところにあります、ボージョレ地区のモルゴン村に到着しました。フランスを移動していると、100kmの移動がすぐ近くに感じられてきて不思議な感覚です(笑)
 モルゴンは南北に大きく広がるボージョレ地区の中では北部になりますが、村名ボージョレとしては南の方に位置します。本日はフルーリー村のヤン・ベルトランにやってきました。

以下輸入元であるサンフォニーさんの紹介文の抜粋です。

「ベルトラン家は1970年に祖父がフルーリーで畑を購入したことから始まりました。ヤンは飲食業から転身し、2012年に醸造学校を卒業。現在は18haの畑のうち2.5haをビオディナミで栽培しています。樽にも強いこだわりを持ち、品種やキュヴェに応じて多様なサイズの樽を使い分けています。最近は自然派生産者の間で注目されるオーストリアのストッキンガー社製の樽を愛用しています。」

若く、有望な造り手の一人と聞いています。樽のこだわりが気になるところです。どんな方なのでしょうか。

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カーヴの建物の前で
待っていてくれたヤンさんは笑顔が素敵な好青年。すぐに今年の状況を話してくれました。

 2025年は雨の影響でベト病が出ているそうです。開花時に降った雨で結実不良を起こして実が小さく、収穫量が減る予想。ただ、この4週間(7月9日の話し)は天気が良くてブドウの状態はとてもよくなっています。

2021年は霜害、2022年は雹、そして2023年は良い年だったが、2024年はまた雹、と安定しない年が続きました。ただ、山のふもとにあるフルーリーはもともと雹害が多い産地なんだそうです。

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 現在のカーヴは2023年から醸造を開始しました。それまでは父親のカーヴ(後ほど移動します)を借りて造っていて、醸造のスケジュールに制約があったり、手狭な為に造ったワインもすぐに出荷しなければならなかったりと色々と思い通りにならないことがありました。
2022年に新しくカーヴを手に入れたことで、いろいろな面で自由が利くようになりました。ビオディナミカレンダーに沿った作業や、広くなったことで理想の期間の熟成も可能になり、品質の面でより良い状態で出荷できるようになりました。

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 2024年はぶどうの状態があまり良くなかったのでジュースと接触させないようにして、低温管理ができるステンレスタンクで全房でマセラシオンカルボニックを厳しくやりました。18日間の長いマセラシオン。その後樽で発酵しました。結果としては軽い抽出になり、きれいなワインになりました。醸造方法はぶどうの状態を見ながら毎年変えてやっています。


では、テイスティングタイムです。 (※相変わらずメモの羅列になりますがお許しください)

    OH! 2024 ACボジョレ モルゴン村コルセ (買いぶどう)

2016年取得の1.7haの畑。ビオディナミ。エネルギーが詰まっている。 樹齢40~80年。

1.1万本/haの密植で実が小さくなる。酸が出る。2024年は遅摘み。
フランボワーズのようなフレッシュさ。マセラシオンカルボニックで軽い抽出。

1/3コンクリートタンク、2/3樽で7か月熟成。

    ボージョレ・ヴィラージュ 2024 ランティニエ村 (買いぶどう)

この村は将来11番目のクリュになるかもしれないと言われている。

花崗岩で青色の石。標高が高く収穫が遅い。力強さと涼しさを兼ね備えるのが特徴。

225Lの古樽のみで7か月の熟成。

    サンタムール 2024 (買いぶどう)11.8

花崗岩シスト土壌(コートロティによくある土壌)。

白コショウのようなスパイシーさとスミレのような香りがでる。

1/2 600L大樽、1/2 225L樽。ピノノワールの古樽使用。

標高高い北面の畑。樹齢5060年。シャルドネが2~3%混植されている。

    モルゴン アイロン 2024

鉄分とマンガンが多い土壌。樹齢20年と60年。

セミマシラシオンカルボニック。ピジャージュして発酵しプレス。

ガメイ、シャルドネ、シラー、ピノノワールが入っていた600Lの樽で熟成。

    フルーリー クック・ド・フードル 2023 

自社畑。父親が2005年から有機栽培を始め、2009年に認証取得。2013年からビオディナミ。

砂浜のような砂質。8か月間ピノノワール、シャルドネ、ガメイの古樽で熟成。
ブレンドして2か月熟成し、瓶熟1年。

フルーリーの特徴は花崗岩が砂質になっているところで、繊細な味わいになる。

    フルーリー カオス 2023

90%砂質10%粘土質。ピノファンの600Lの古樽で熟成。

 

すべての樽の個性を知り尽くす

ヤンさんは樽をいかに使うかを考えてワイン造りをしています。ガメイ以外で使った5~6年の古樽を使用するのがひとつの特徴です。すべての樽の個性を知り尽くさないと、その年のワインに合った樽を選ぶことはできません。


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(写真)様々な種類の樽


    モルゴン ディナミ 2023

フルーリーのすぐ横のモルゴンなので、フルーリーの砂質とモルゴンのシスト土壌が混じる。
フルーリーっぽい(繊細なニュアンスの)モルゴンができる。

ピノノワール、モンドゥーズ、シラーの入っていた樽。

    フルーリー エミーユ 2023

フルーリーのいくつかの区画を選んで造った。樹齢は60年、80年と自分が植えた4年。樹齢4年の畑には110種類のガメイとアリゴテを混植。現在1.5haになる。

アリゴテが1012%入っていて、アリゴテによって酸が加わる。 

    フルーリー クー・ド・フードル 2020

2020年は収穫前、非常に暑くタンニンの熟度が上がったがぶどうが成長を止めたため酸は残り、Alcは高くならなかった。完熟以上なのに酸が残った面白く特殊な年。
15年くらいは熟成せさて飲んでほしい。

    モルゴン ディナミ 2017

クラッシックなボジョレーのスタイル。600Lのシラーの樽。

艶やかな香り、甘草。土、きのこ。旨味。熟成感。

    コート・ド・ピィ 白 2023 (バレルから)

シスト、泥灰土。樹齢45年のシャルドネ。樽発酵。
試しに造っている。3年程度寝かせてジュラのような酸のあるワインを造りたい。

 

ここで新カーヴから少し坂を上り、旧カーヴ兼ご実家の前に広がる畑、カオス畑へ移動しました。
ワインを片手にお話再開です。

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こちらの畑は7.5ha、花崗岩、砂質。水捌け良く乾燥する。
ゴブレ仕立ては昔ながらのやり方だけれども、風通しが良くブドウの房と房の間に空気の通り道ができるとても良いやり方です。葉っぱが上にくることで暑さからも守ってくれて、今の時代に適していると考えています。

いつもは樹を伸ばしてぶどうに日陰を作るようにしているが、今年は雨が多いため、いつもよりも風を当てて乾かさなければならないので葉を落としています。年によって工夫しながら少しずつ栽培方法を変えています。

また、水分をあまり必要としないやり方なので、この畑の砂質のような乾いた土壌にあっています。

 

ここで、旧カーヴに移動してテイスティングの続きです。元々は祖父が購入したシャトーの一部だそうで、ご自宅でもあります。

    カオス 2021 (目の前に広がる畑のワインです)

砂質とちょっと粘土質がある分、リッチな感じがある。

酸が強く出ている。生き生き果実味。

    ヌーヴォー 2019 ピューアオリジン(ジュール・ショベへのオマージュワイン)

マセラシオンカルボニック。50%シャルドネ、50%ガメイの樽で1.5か月熟成。

1.5か月熟成させるとワインも成長していい状態になる。サンスフル。

2016年と2019年の過去に2回しか造ったことないヌーヴォーのひとつ。
プリムールは短い時間で造るので忙しすぎて、毎年は難しいのですが、今年は造ります。


 頭の中はいつもワインのことで一杯

 
 彼は年々変わる気候に合わせて丁寧にブドウを育てています。ビオディナミの調合剤にも日々思いを巡らせ、醸造もその年のブドウの状態に合わせ少しずつ変えています。
 硫黄はイタリアから輸入していて、火山から採掘した自然なものを使用しています。フランス国内でも数台しかない硫黄を焼いて気化する機械を持っているそうで、合成した硫黄より殺菌、酸化防止の効力大きいので使用量が非常に少なくて済みます。基本はサンスフルです。使っても5mg/L程度の使用でそれ以上は入れません。

 コルクについてもこだわりをもって選んでいます。現在3つの会社と取引していて、年によって変えています。ピレネー・オリエンタルは硬く、スペイン、ポルトガルはちょっと柔らかい。 

 そして樽。樽はスパイスのようなものと話していましたが、いろいろな樽を使うことでワインの表情に少しだけ彩りを与える。樽熟瓶熟をしっかり行うことで、ワインが成長し、状態が良くなっていくのだと考えています。

「小さいことを積み重ねることでワインはおいしくなっていく。考えることは一杯ある。」と語ってくれました。ヤン・ベルトランのワイン造りの奥深さに少しでも触れられてとても印象深い訪問となりました。

 

余談です。

試飲で使っていたパニエが気になって、思わず、「これいいですねぇ~、めちゃくちゃかっこいい」とヤンに言ったところ、「これはおじいさんが作ったものです。馬の蹄を溶接して作ったんですよ。」と大変ご自慢の物でした。
フランスでは古くなったものを大切に使い続けることは知っていましたが、こうした素敵なアップサイクルもあるのですね、欲しくなりました。ハンドルは恐らくアイロンの持ち手かと思います。ただ、このパニエは重かったー()


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