ジュラから始まったドメーヌ訪問の最終地はオーセールのフランソワ・エコです。エコさんも異業種からの転身組。ヴァン・ナチュールをアメリカに紹介するかたわら自分のワインを造り始めました。
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この日は土曜日。「一緒にランチをしよう」というご提案をいただき、朝ごはん抜きでオーベルニュから一気に北上しました。
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計ったかのようなタイミングでエコ宅に到着すると、ご本人がキッチンで腕を振るっていました。
カーヴ兼自宅には広いキッチンがあり、普段の食事もお客さんが来た時の料理もエコさんが担当しているとのことで手慣れています。隣村のマルシェで買った丸々とした鶏や鶉をふるまってくれました。
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食事しながらの話題は先ごろ来日した時のことや食べもののことなど世間話。ひとしきり食べ終わってからのんびりとお話しを伺いました。
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「ワインも料理もsaveurs(風味、香り)が大事」

エコさんが造りたいのはアロマ豊かなワイン。そのためにじっくり時間をかけてアロマとキャラクターを引き出したいといいます。運送をも含めた作業のディティールも大切だ、という説明を聞いて「輸送にまで考えが及ぶのはエコさんがエクスポーターをやってたからですか?」と質問すると「確かにそうかもしれないね、だけど一番大切なのは土地とブドウのキャラクターを理解することだよ」との答え。(でもやはりエンドユーザーに届くまでのことや輸出先での扱いにまで気が配れるのは今までの職あってのことではないかと思われました。)

 

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自宅から車で10分もしない野原の中に1haにもみたない畑がありました。

品種はガメイ、アブリュー、ピノノワール、セザール、ピノドニスなど。狭い畑の中にも異なる地質があるので、適した品種を植え分けているそうです。 樹の仕立てはかなり低め(高さ約2030センチほど)

その理由は樹のエネルギーを強く凝縮するため。剪定は強い樹を残して、強めに行う。そのせいか樹齢1015年の樹々なのにとても力強い印象です。
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 いっぽう、新梢はのびるに任せるまま。先端はセンサーの役割があるので、むやみにカットして成長を無理に止めることはしません。気持ち良い風が吹き抜ける、日照にも恵まれたこの場所はステファン・マジョンヌ(元ペイラ、オーヴェルニュ)のアドヴァイスを受けて選んだそう。見える部分のアドバンテージだけではなく、地下の水脈も決め手となっています。

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今回訪問した造り手にはナチュール特有の醸造についての質問(たとえば亜硫酸無添加のリスク対応)はほとんどしていません。自分が思っている以上に彼らは畑の人であり、醸造スタイル以上にぶどうの質にこだわっている様子が言葉の端々に感じられたからです。ワイン造りの極一部だけに触れて、わかったような気になってはいけないですね。半端な質問よりも現地の風景や本人の人となりに触れた方がワインの個性ややりたいことの方向性が理解できるような気がします。これからますます「誰がどのような思いでこのワインを造ったのか」が知りたくなりそう。と同時にワインを選ぶポイントが「品種」や「AOP」だけではなく、「誰のワインなのか」が重要なのだと再認識しました。

ドメーヌ訪問から早1ヶ月が過ぎましたが、写真やワインのラベルを見るたびに生き生きとした生産者の顔が思い浮かびます。自分が惚れたワインはお客様にも美味しいって言ってもらいたい。だからリアルな言葉でワインの魅力をお伝えできるよう、これからも国内外あちこち行って、いっぱい飲みまくりたいと思います。

おわり